ひびにいる人たちを観察する

#07 junko ota

14:00 神保町駅A7出口で待ち合わせ。

このインタビューは「記録」なので普段と違って「写真を撮ろう!」と思いながらみんなと過ごしている。普段の私は旅先でもほとんど写真は撮らない。いつ写真データがとんでも多分ダメージはない。写真の対象を探しながら生活を過ごすのはエネルギーがすごくいる、大変。神保町A7出口の横のタイルの色合いがいいなと思って写真を撮る。その一部始終をおたじゅんは見ていたようで、肩越しに話しかけられて驚く。
おたじゅんの行きつけの喫茶店に連れていってもらう。案内された席に着き、おたじゅんが、話す。


・・・・・・


いい席だね。かわいい。
ここはウインナーコーヒーが有名なお店なんだけど、どうしよっかな。

なんで神保町かというと、神保町がお金があったら住みたい町だから。1番好きな町!だって本屋がいっぱいあるのと、文房具屋がいっぱいあるのと、あと、なんだかんだ好きだから、バイトもしてたの。神保町で。喫茶店が多いの。喫茶店巡りも好きだし、本屋も好きだし、だから神保町が好きなの。都内で1番!ここも、よく来る。

初めて来たのは、たぶん、映画版のハチクロのロケ地になってて、、、それだから、多分、すげー前だと思う。
東京出てきてすぐに、神保町でバイトしていたから、、、だからそのへんから、喫茶店巡りが始まった。基本的に1人で、本を持って来たりとか。文学少女ぶってた時期が、ふふふ、全然違うんだけど!ほんとは、漫画とか読みたいけどちょっと文庫本読んで、悦に浸ってる時期があって!
最近はもう実務的に、台詞覚えたりとか、無駄に手帳を凝って書いてみたりとか。もう本はあまり読まないんだけど、それでもよく来る。


お酒が飲めないから私、、、コーヒーも飲めないんだけど。致命的だわ。美味しい居酒屋さんとか知らないから、せめて喫茶店は、っていう。コーヒー、ここのウインナーコーヒーも飲んだことあるんだけど、飲めるんだけど、コーヒー飲むと気持ち悪くなる人だから、、、。


ミントだめ?もったいない!チョコミントも食べれない人?衝撃的なんだけど!損してる!チョコミント食べれる一族に入りたいでしょ?大人になったらいけるって!コンビニのアイスのチョコミントなら、ファミマに売ってる、ぎっしり満足っていうカップのやつがあんの。おっきめなんだけど、それが1番美味しい。初心者にもいける。あとセブンティーンアイスのチョコミント。あれは、親しみやすい味。絶対損してる、絶対食べれるようになってほしいわ―大好きなんだよな。
フリスクとか食べれるでしょ?じゃいけるって。チョコが邪魔なのか。脳が混乱すんのか、わかるわ。はー、チョコミント食べてほし―!

忘れそうだから、もう渡しておこう。見てみて!
いま働いてるホテルの、オリジナルの日本酒。貰ったんだけど、飲めないから、、、私ってすごい酒飲みそうじゃん、ぱっと見。バイトから帰るとき、呼び止められて、貰った。すげー、お酒も、タバコも吸うと思われてるんだよね、キャラなの、もう。だから、それを全然否定しないのめんどくさいから。喫煙所とか行こうって言われたらさすがに「吸わないんですよこう見えて―」って言うんだけど、吸ってる、と思われてる分には否定しない。
それ、冷やした方がいいのかな。なにもわからない。

あてそれは、ぜひオススメしたいんだけど、タイで買ったんです。タイ行ったことある?これみんな必需品で。タイで、みんな暑いときに、これを鼻から吸うの。リフレッシュしたいときのやつで、吸うの。どこでも。ほんとみんなやってて、おじさんとかおばさんとかが、、、。
めっちゃそれが気に入っちゃって、大量に買って帰ったからぜひ使ってほしい!もう、電車とかでも吸っちゃうから、感覚が麻痺ってて。呼び名があるんだよね、なんだったかな―、、、。
で、それはえびめし。地元の名物。帰省したら自分用に4、5箱買ってくるの。それのお裾分け。炒めるだけ!カレーソースご飯みたいな味。


またタイ行きたいなー、いつ死ぬかわかんないと思ったらさ―。



グリーン置き出したのは、いまの家に来て、結構すぐ。初めての1人暮らしで、そっから、なんか、グリーン、、、観葉植物をすっごい買うようになったんだけど、でも世話しないから。でも、わりと生き残ってる子もいる。長年がんばってる子とかも。
最初は水栽培だったの。でもだんだんさ、垂れるのがほしいな―と思ったり、アイビーっぽいのがほしいと思ったりして、土に手出しちゃった。最初は嫌だったの、土が。100均とかに売ってるタピオカみたいな丸いつぶつぶの柔らかいビーズがあんのね。「観葉植物の土の代わりに」って書いてあってやった―!と思ったけど、すごい貧乏くさいし、すごいダサいの。すぐ枯れちゃったの。結局土じゃないとダメなんだなと思って。

いま生き残ってるのは、なんか、こういう、しゅーってなった、普通の、しゅーって伸びる、ハートみたいな葉っぱのやつ。その子はずっと水。その子がいるのと、吊るしてるのは、ワイヤープランツ。下に下に伸びていくやつ。丸い、葉っぱのやつ。私が唯一枯らさなかった子だよ。何かが育っていくってかわいいねえ。アボカドの水栽培も、やってみたいな。ねえあの種ってさ、まん丸じゃん?水栽培するときの、向きとかないの?
不思議だよね。だってさ、下にした方から根が出るってさ、、、球根とかは向きあるもんね。向きないのかな。向きなかったらすごくない?水につけた方から根が出るんだよ。かわいいねえ。やばい。


セミが1番怖い。虫の中でもキングオブ怖い。トップオブ怖い。最初からじゃなくて、大人になってからこわい。
カッチカチしてるのと、ひっくり返ってるときの暴れ方。あとどこに飛んでくるのか分かんないから。あと当たったときにめっちゃ硬い!っていうのが、怖い。硬いのが怖い。嫌いな虫が、あんな速いんだよ?嫌いなものが、あのスピードよ?
ワンルームに入られたとき、怖すぎて声ひと言もでなかったもん。網とかないじゃん家に!もう、ザルを持って。めっちゃくちゃ恐怖だった、あれ。どんなホラーより、めちゃくちゃ怖かった。なんか苦手なものない?

お化け怖い。見える人?私も見えない。霊感ない人が怖がるんだよね。見たことないから怖いんだよね。見える人は怖くないっていうよね。最初から見える人。
昔バイトが一緒だった友達が、元から見えるんだよね、その子からするともう日常。でも家とかじゃなくて、友達は、人が集まるところでしかあんま見ない、だからお店とかにすごい多いみたい。
酷いのがさ、その友達、私がビビりなの知ってるくせに、バイト先の更衣室に向かう階段の踊り場にあんまり良くない感じの霊がいるから、わたしはあいつと2人きりになるとまずいから、絶対先に上って!って言われれて。ここにいるんだ、、、っていう。毎朝。やっぱり、見えたりさ、気づいてくれる人に反応するらしいから。友達が2人きりになると、ついてきちゃうから。


その子と働いてると、ケチャップのディスペンサーの蓋とかが無くなったりするのが、次の日の朝にまな板の上とかにポン、ってあるの。で、私がね、あったんだよ蓋!っていったら、ここには、あんまり良くない霊のあいつだけじゃなくて、いい霊もいるから。って言うの。探してくれるんだって。

見える人は見える人で大変だね、なんでだろうね、生きてる者の方に来ちゃうんだろうね。そうだね、不思議だね。だって霊同士で見えたらさ、さびしいとかさ、ないよね。
霊はさ、もう、1人ぼっちなんだ、、、!お互い見えてないんじゃない?それ辛いわ。人間のこと、生きてる人しか見えないのかもしれない!
さびしいね、怖い。え―――、でもいい気付きをしたな。

 

16:50/神保町駅前にて解散。

おたじゅん家の植物たちの写真を送ってもらう約束をして別れた。しかし後日、おたじゅんなぜかインタビュー時に話してくれた生き残ってる子たちじゃない、全く関係ない植物の写真を送ってきた。
私は大学を卒業してフリーターになった日、もう何処にも所属していない心細さから植物を買いはじめたのだけど、おたじゅんも、初めて観葉植物を置いた日は1人暮らしに心細さを感じていたからなのだろうか。植物は人の代わりになり得る気がする。花瓶の内側の水蒸気や暖かさで緩むチューリップの花を見たりすると植物は自分から動かないだけで、人間のようだと思う。いつかおたじゅんの家を花を持って訪ねてみたい。例えばセミが部屋に入ってしまった時には、すぐにあげてくれるだろうな、なんてことを考えながら、帰った。