ひびにいる人たちを観察する

#11 mayuko inui

13:00/神田駅西口で待ち合わせ。

いぬいちゃんの行ってみたかった喫茶店に向かう。お昼時で店内は少し混んでいて、カウンターの席に横並びで案内される。お冷やを飲んでいると、ソファー席が空いたので移動させてもらう。席につき、店内に貼られたメニューと手元のメニューを交互に眺めながらいぬいちゃんが、話す。

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ウイスキー入りのコーヒーもある、これが有名なのかな?こういう、ブレンドを飲むか、アレンジを飲むかで迷う。ふふふ。コーヒーはよく飲む、でも詳しくない。何か食べようかな、どうしよう。これも気になる。チーズトースト、、、。あ、ねえ、これめっちゃ美味しそう!



高校は、インターナショナルっぽいところ。中高一貫だったから6年間、毎日2時間かけて電車で通っていて。いま考えるとよくやってたな。5日くらい前まで大阪に帰ってて。なんか東京と睡眠の質が違うことに気づいた、、、ふふ。東京ってさ、虫の音が聞こえなくない?いまの家が聞こえなくて。聞こえないことにも気づいてない感じ、周り、ビルとかだから。でも大阪帰って、実家で、、、帰省初日、寝てたら、リーンリーンって、虫!いた!虫っていたんや!みたいな。そうや虫っておったな、みたいなって、めっちゃ熟睡できた。部屋に虫めっちゃ出る。木造の家だからめちゃくちゃいる。虫は平気、でも地を這う系は無理、毛虫とか。地を這う以外は全然大丈夫。お兄ちゃんの方が虫無理で、いつも虫退治はわたしがやってる。お兄ちゃんは2人いて、1人は結構近いところに住んでる。末っ子で長女だから、可愛がられる、、、なんか、ひいきされてるって感じではないけど、やっぱりね、あると思う。父親に怒られたことがなくて。甘々っていうか、別にそんな甘やかすって感じでもないけど、何をしても別に怒らない、みたいな。お兄ちゃんたちにも怒んなかった。もともとそんな感じだけど、プラス、かつ、甘い。みたいな。叱り役はだからずっと母親で。めっちゃ覚えてるのは、上京が決まるってなったときに母とカラオケに行って、わたしが特に考えもせず山口百恵の秋桜、嫁に行く、娘の歌を何も考えずチョイスして、それを歌っていたら横で母親が泣いちゃって。めったに泣いたりしない人で、強がる人だから、泣いた!と思ってびっくりした。でも確かに私の選曲が悪かったなーと思って。嫁入りじゃないけどね、でも、別れの。でも上京に関しては、なんかそれくらい。止められたりは、なかった。ホームシック、上京1日目はあったかも。まだキッチン用具とかも全然揃えられてなかったから、近くのお惣菜屋さんで肉じゃがを買って、ごはんチンはして、みたいな。家で、段ボールの机で食べてたらめっちゃ号泣。寂しすぎて号泣したけど、それ以来はないかな、ふふふ。快適、1人暮らし。1人暮らし、あんまり寂しくない人?わたしも。
たまにさ1人暮らししている友達が、どうしても寂しい夜がある、みたいな話をされるんだけど全然共感できなくて。いま、家族4人がひとりひとり別々に住んでるから。で、お盆とか年末に、4人全員実家に集まるみたいなことがおこんねんけど、なんかね、全員1人暮らしだから、、、めっちゃね、母親がイライラしてるのが面白い。ふふ、「わたし昔みんなのご飯つくっていたのが信じられない!」って言ってて、確かになって思った。帰れちゃう距離の大学だったら、頻繁に帰ってたのかな―どうなんやろ。

でも東京に出たい!と思ったことは1回もなくて。それはなかったな。でも、でもそう言いつつ、ほんとに田舎で、駅前西友しかない、みたいなとこやったから、、、もっと知りたいこととかめっちゃあるのに、近場じゃ全然満たされないから、毎週休みになると難波とか心斎橋に出て、そういう芸術とか文化系の本とかが豊富な本屋さんに足しげく通って、そこで本を買って、帰る。みたいなことをほんとに毎週してて、、、そういうの思い返すとまあ、なんか、物足りないみたいな気持ちがずっとあったんかな―。よく京都にも1人で行ってた。神社、仏閣巡りとか好きで。この前帰省した時、友達と、京都のさ、下鴨古本市に行った。はあ、京都の学生生活も最高やろうな―!って思った。絶対最高、土地がもう。わたしいまずっと学生でいたい。ふふ、いままさに。卒業制作、作品つくるよ。1月末にお披露目。


敬語だとあんま大阪弁がでなくて、、、敬語の大阪弁ってない気がする。だから標準語っぽい感じになるし、なんか標準語だとなんか、、、地の感覚と、ちょっとやっぱ距離があるから、無意識に気を使ってるかんじになっちゃうし、自分がね。だから、普通に、ちゃうやろ!ちゃうやろ!とか言える年代の人、ありがたい。いま大学は夏休みだよ。結構長い。9月の末に母親とフィンランドに行く、めっちゃ楽しみ。卒制やばいねんけどまあ一旦置いといて。でも絶対出掛けた方がいいよね。この前、お盆の時に予約した。
今年の3月にスウェーデンに友達と行って、めちゃくちゃ良くて。北欧に対する憧れがめっちゃあって、、、ジェンダーギャップ指数がさ、いい?低いっていうか、ギャップが低いっていうのかな、それで目をつけてて、男女平等の国。そこに行ってみたくて、それで友達と行ったらほんとに良くて、、、で、また北欧行きたいなーと思ってて、でも前に行ったスウェーデンはあれやからフィンランド。隣、行ってみようってなって。地震も少ないよね、だからかな、めっちゃ昔の建物とか残ってた。綺麗やった、街並みが。ヨーロッパとか地震少ないよね。楽しみ。ショッピングもしたいけど。女の人がすごい堂々としてて、、、なんていうんやろな、なんか。ほんとにね、将来は出たい、日本を。どこに住むか探してんの、今。わたしは英語話せない!ふふふ。インターナショナルで、卒業した人はもちろん英語に強くて、英語の授業とかも普通に受けてたけど、なんかめっちゃ苦手になっちゃって。入学当初は、中1?はもう英語学びたい!って気持ちでいて勉強も楽しかったけどなんか、、、何?分詞構文とか出てきたあたりで何これ?ってなって、興味なくなって、だから友達内で有名なくらい英語出来ない。そのまま卒業しちゃった。でも、海外行くマインドはある!マインドだけね。


なんかねー、成人式のとき大阪には帰ってたんだけど、なんか、、、別にいっか!と思って、で、会場の前を母親と車でばーっと通って、あ、みんないるわ〜とか言ってそのまま2人でショッピングに行って、っていう日やった。ふふふ。前撮りはしたい、ってちょっと思ってる。今でも。着物はめっちゃ好きやったけど、めんどくささが勝っちゃってる、いま。でももう大学卒業の年だから、撮るなら早くしないと!卒業式は着物着ようかなと思ってる。1個持ってて。高校のときに、プロムってのがあって、、、よくさ、海外のドラマとかで女の子がドレス着て男の子がスーツ着てさ、踊る、学校のイベントがそのままあって、、、そうそう、それ!ハイスクールミュージカルとか!それ!!それがあんのよ、高校から。中学はないんだけど。もう一大イベントで、学校としては。で、男の子が誘ったりすんねん、女の子を。でもそういうのとは無縁やったから、誰とも、誰にも誘われず、誘わず、なんかムカつくなあとか思って、ふふふ、なんか、、、別に楽しくないぞ!とか思って。せめてもの抵抗で、みんなドレス着てるからあたしは誰とも、まあ踊らないから、もう前提として。着物きてこ!と思って。そのときにずっと欲しかった着物を1着買ってもらって、1人で着物着て行って、ずっとトイレで友達と遊んでた。会場には行かず。白と黒の、無地のめっちゃモダンなやつ。ずっと欲しくて。それでもう、もう、踊りなんてダサいことしてんなよ、みたいな、ふふふ、、、精神で、尖ってた。ふふ、尖ってた!別にね、楽しめばいいのに。いま思えば。似たような女子全員とトイレ行って、遊んで。それを着るかも。着るかな、それしか持ってないから。
服も好きだけどメイクの方がちょい勝ってるかも、情熱としては。私服やって、6年間。何してもよかった、染めてもピアスもメイクも、靴も何でも良かったから。だから中学2年生くらいでメイクを始めて、で、そこからなんか、、、研究っていう研究とかは別にしなかったけど、段々、教えてもらったりしてやり方わかってきて、自分の顔にはこれが合うのか、とかそういうのやってたな―。楽しんでやってた。好きな人はやって、別に興味ない人はやんなくていいなって思って。色モノにしか興味、情熱がいかへんくて、、、そう、だからファンデとか、洗顔、乳液、化粧水とかは、全然わかんない。口紅とかアイシャドウとか、ポイントメイクが好きで。そういうのはめっちゃ好きやけどどれが肌にいいかとかあるやん。Webとか調べたら、なんか。そういうのがわからない。そういうのもっと詳しくなりたい。
服先行で、メイクの色決めてる気がする。めっちゃむずい。どうしてもこの服着たいし、どうしても、合わんけど、このアイシャドウがいい!みたいな日もたまにあって、だからちぐはぐな日もあり。それはフィーリングでもういっか!みたいな感じ。



ちょっとタバコ吸ってもいいですか?芸大とか吸う人の割合やばいよね。それでわたしも吸うようになっちゃった。でも2020年に吸えるお店が激減するらしくて、それまでにやめよっかな、、、もうすぐじゃん!ふふ。なんかさ、大学の友達、仲良い子が3人いて私いれて4人で、4分の3喫煙者で。で、みんなでディズニー行こうって話になったけど「え、待ってディズニーって吸える?」みたいな。それ確認してからじゃない?みたいな、ふふふ。

落ち着く。なんか。全然、代用品?これの代用品が出たら、全然そっちにする。だけどタバコ越える落ち着くやつってあんのかな。吸い始める理由はまあ周りが吸ってたってのもあるけど、こういうさ、誰かと面と向かって喋るときって会話が止まったらさ、「…」ってなっちゃうやん。でもさ、こうやって、湯気とか煙だけが動いてくれてたら何かは動いてる、みたいな。なんか安心感があるというか、こうしてるだけで時が過ぎるし、っていうのもあった。「…」ってなるとめっちゃそわそわしちゃうタイプやから。初対面の人とかさ、どうしようって思っちゃう。最初は、まじでWebで調べた。初心者と女性が吸いやすいやつで。それに慣れてから、大学にすごい変わった銘柄が結構置いてて。そのなかでジャケ買いしたのがあって、なんか1回買ってみよって思って買ったやつがすっごい美味しくて。それにもう、絞って。ふふふ。今も。ボヘームシガーNo.6ってやつ。今日持ってきたやつは、友達がオススメしてくれた。ブルーベリーの味。でもスースーする。甘い、めっちゃ。巻きタバコはめっちゃいろんなフレーバーあるみたい、あれもめっちゃ面白そう。
あ、これあげるやつ、、、。なぜ、なんか、間違えて2冊買ってて。で、あ、被ったと思って、その1冊を他の人にもうあげてて、前に。だからこれはもう1冊あったやつを。あげるの、本がいいなと思って、人にあげるってなるとこの、、、あげたことのある本第2弾みたいな。前、そういやこれ人にあげたなと思ったから。その時はサークルのプレゼント大会みたいなやつで1冊あげた。結構、恋愛。サガン。若くして名声を得た人、「悲しみよこんにちは」だけ読んだことがあって、すごい良かった。高級車乗り回してたらしい、でも破滅的な人生だったみたい。パリで高級車乗り回してた女。かっこいい。

喫茶店で本読んでってやってるときが1番楽しい。1人で、疲れたなとか、まあ、いい気分の時も行ったりする。1番楽しい時間。家の近くにもある、電車にも乗ったりする。山手線、主要駅の喫茶店を頭に入れて、あ、いまここにいこ、とか今日これに行くからあそこか、みたいな感じで。本もすごい好き。あげたやつは、作家買い。「悲しみよこんにちは」の人だ!みたいな。
大量に家に本があるから、追い付かなくてやばい。児童文学ってすごいって思う。最近、児童文学ってめっちゃすごいから読んだ方がいいなと思って、魔女の宅急便とかを原作でちゃんと読んでみようと思って、読んだ。あと絵本もすっごい好きで、ちっちゃい頃から。お化けの絵本がめっちゃ好きやった。お化けが好きで、昔から。あのビジュアルが可愛くて、白いやつ。ホラーが好きとかじゃなくて。可愛くて、ビジュアル。半透明な感じ。あ、でも昔から結構、怖めの絵本ばっかり読んでたかも。異世界にいつの間にか行く、的な。ドキドキする絵本が好きだった。1個めっちゃ覚えてるのが、物をすごい買って、買ってってせがむ女の子がいて。下駄とか着物とか、そういう何故か和風の設定で。でも、すぐなくしちゃうの、大切にしない。でも買って、買ってっていつもせがんでて、で、ある晩、寝てたら不思議な歌が聞こえてきて、女の子は怖いなと思って母親に言うの。そしたら母親も、じゃあいっしょに寝て、聞こえるかどうかお母さんも一緒に聞いてみましょう、ってなって。そしたら、すごい聞こえてくるの、またおんなじ歌が。それで母親が、これは人間じゃなさそうね、、、みたいな言葉を言って!その台詞がめっちゃ怖くて、これは人間じゃない、、、わね。みたいな冷静にお母さんが言って。月明かりで、ちょっと覗いてみたら、月明かりの薄明かるい中、手足がすごいひょろっと長い、顔が下駄のお化けが、着物を着て列になってふわ〜って踊ってる絵が次のページにあって。で、ちょっと薄気味悪い歌を歌って、みんな、おんなじ方向に歩いていく。翌朝、その方向に行ってみたら、物置に着いて、家の。そこに女の子が今まで大切にしなくて、どっかで無くしちゃった下駄が、めっちゃ転がってる、みたいな絵本があって、それがめっちゃ好きだった。怖くて。
あともう1個好きだったのが、それもまた異世界系で、、、公園で遊んでて、男の子が。そしたら聞いたことのない歌が、、、歌だ!また!ふふ、、、聞こえてくんの、で、なんやろと思って、木の根っこから聞こえてくる!ってなって、そこに近づいたら吸い込まれちゃって、異世界に行って、すごい妖怪3人に出会って、妖怪3人と順番に遊んでいって、で、ふとお母さんに会いたいなーと思い出して、ママのこと。で、お母さ―ん!って泣いちゃう。泣いたら、たぶんその声が、、、多分、お母さんを求める気持ちが、その世界の崩壊に繋がってて、妖怪たちは「その言葉を言うな!」って止めるけど男の子はもうわーん!って泣いちゃって、で、気づいたら木の根っこに戻ってて、お母さんにどこ行ってたの!って言われるけどあんまりよく覚えていない。でもあの歌だけはずっと頭に残ってる、みたいな絵本で。それも好き。なんで、なんで好きだったんだろう、、、お化けのビジュアルがめちゃくちゃ怖くてさ、ちょっと見て欲しい。検索するわ、白いキツネが出てくる、、、そう、これ。このキツネ、めっちゃ怖くない?めっちゃ怖くて。これが3人の妖怪で、このふたりはまあ可愛いけどこいつだけやばいなと思って。もんもんびゃっこって名前。めっちゃでかいの、しかも。怖くてなんか好きだった、、、。これは下駄、さっきの。これが夜中、、、歩いてくんの、このひょろひょろの下駄が。今も実家にある。大切にとってある、これだけは売れない、この2冊。吸血鬼の話もよく読んでたな。妖怪が好きだったのかな、、、。この吸血鬼のシリーズがめっちゃ好きでこれがリュディガーっていう吸血鬼。この吸血鬼のことが一時期まじで好きになっちゃって、夢に出てきて、めっちゃ覚えてるのがそのリュディガーと話してて、じゃあ僕の電話番号教えてあげるよ!みたいなことを言われて、、、うれしくて、え!教えて欲しい!って言って、で、僕の電話番号は、、、って言った瞬間に目が覚めちゃって!今でもすごい後悔してる。あそこで覚めなければ、、、!

魔女に憧れてた。吸血鬼とか魔女とか。あとすごいジブリっ子だった。ジブリ見たあとさ、嘘じゃなくてほんとに正座しちゃうの、なんか、終わったあと。正座しちゃう、泣きながら。最近さ、宮崎駿のドキュメンタリーを見てて。たぶん絵コンテを描きなおしてて、ちがう、ちがう!みたいな、、、で、言った一言がこれ。「ゆがんだものはいらないです」。最高!と思って、哲学過ぎて。この台詞と共にさ、大量に破棄された絵コンテがさ、、、。ふふふ、確かに、ゆがんだものなんかいらん。



15:30/神田駅西口にて解散。

初めて会った時から、いぬいちゃんにお化粧について聞いてみたかった。お化粧を楽しんでる人は、見てわかる。私はお化粧についてはもう、果てしなくわからない。卒業式前日の夜にラメをのせたり落としたりして一睡も出来なかったし、デートの時に睫毛をあげることにより何秒か長く目が合うことになる覚悟はないし、お葬式の時にリップを直すことを考えてはじめて喪服にポケットがないことに気づいたり。寂しい記憶ばっかりだ。いぬいちゃんはお化粧した自分の顔を見て、寂しくなったことはあるのだろうか。次々に思い出されるお化粧にまつわる寂しさを感じながら、帰った。