ひびにいる人たちを観察する

#15 manami shimura

18:30/上野駅 公園口で待ち合わせ。

しむらさんと私は学年も学科も違うけど同じ大学の卒業生だ。だからしむらさんがひびに入る前から面識があった。しむらさんは大学を卒業後、東京の大学院に進んだらしい。京都で出会って、また東京で再会できてうれしい。
今日は自宅の近くで花火大会があるらしく、その影響で電車が遅延していた。上野駅に着くと、上野駅もすごい人の数で浴衣姿の人もいる。ここも近くで花火大会があるのかなと眺めていると、人混みのなかにしむらさんを見つける。しむらさんがこちらへ駆け寄ってきて、話す。

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アメ横があっちなんですけど、アメ横に行きましょう!その辺から下って、行けたはずなので。

今日は大学の学祭もあって、わたしも作品を展示しています。学祭もあり、でも普通に観光客もありで、すごいカオスな状態で、昼間とか、すごい人が多くて。上野は、上野公園の方にしかあんまり行ったことなくって、アメ横来たの、ほんとに1、2回くらいなんで。だから全然詳しくなくて。

土曜日だからお店入れるところ限られてそう、、、うわー、どうしよう。いろいろ、迷いますね。ちょっと歩きましょうか。どこのお店がいいとかなくて、全然、見た感じで決めようと思ってて。
この辺は和食が多めみたいですね、何か苦手な食べ物あります?

芸大の院に通ってて、だから今日展示しているんです。学部の時の卒業制作で、ベトナムに行きました。ベトナム行って、戦争の傷跡が日常に残っていることをテーマに制作をしていて。それで戦争の跡が残っている場所を巡ったりして、写真撮ったり映像撮ったり、文章書いたりして。
ベトナムっていう国がもう好きだったんですよ。結構、東南アジアってカオスじゃないですか、雰囲気が。そのカオスな感じに憧れていた時があって。大学の先輩に結構1人で海外とか行ったり、女3人でインドに行ってた人がいて。その人がすごい、いいなあと、人としてすごい好きだったんですよ。で、そういう感じに憧れて東南アジア行きたいなあと、ベトナムいいなあと思って。1人で行きました!みんな、1人で海外行けないって言うんですけど1回行ったら全部行けるようになりました、ほんとに。パリ行きました、こないだ。ルーブルとか。ツアーが苦手だったから1人で行きたいのかもしれないです。自分でおもしろいなと思ったポイントに長く居たりとか、どうでもいいなってところすぐ帰っちゃうんで、自分のペースで観光出来るのが良くて。卒業旅行はパリに1週間くらい、1人でのんびりしてて。先生がオススメの美術館を教えてくれたのでそこをまわって、、、のんびりしてました、ふふふ。ほんとに英語、簡単に出来れば大丈夫です。地元のスーパーの店員さんとかも英語で話しかけてくれたりするんです、全然大丈夫です。

学校でずっと人と一緒にいるので、休日は割と1人でゆっくりしたいなという気持ちにはなります。

実家は東京寄りの、横浜みたいな、川崎に限りなく近い横浜みたいな感じで、、、。わたし結構、東京、嫌とまではいかないけど、つまんないなあって思って。でも東京に対する認識みたいなのが人によって違うのもおもしろいと思っていて。
実家は東京寄りだったんですけど、都内に出る交通の便があんまりよくなかったんですよ。横浜方面はまあまあ良かったんですけど。都内に出るときにやっぱり絶対渋谷で乗り換えになるんで、昔から渋谷に行く頻度が高くて。例えば関西に行くと「渋谷すごい、都会」みたいなイメージを持っている人が一定数いて、でもわたしにとって渋谷は別に人が多いだけで嫌だな、っていうイメージがあったので戸惑ったというか。ほんとに東京はちょっと窮屈だな、って思う時があって。なんでもあるがゆえの窮屈さ、みたいな。でも美術館は正直東京が1番いいなと思って、舞台も見やすいし、芸術系はいいなって思います。普段、学校の近くに住んでるので電車はそんなに乗らないんですけど、いまはまさに芸祭の期間で上野に毎日通ってて、通勤ラッシュに被ったりするじゃないですか。満員電車久々に乗ったらもう、なんか、、、東京やっぱやだわ、ってすごい、思っちゃって。人が少なかったら、街としては普通に好きだと思うんですよね。でも人の多さがやっぱり街を作ってる感じがする。地元が割と東京が身近だったから、東京に憧れない感じがあった気はしてて、地方は地方で窮屈なところは窮屈だろうなと思うし、憧れる気持ちは分からなくはないんですけど、あんまりなあ、って感じです、私は。

大学は京都の大学だったから、、、。大学生の時に、高校とか中学の話をするじゃないですか。わたし高校は私立だったんで、都内から通ってる子がすごい多くて。学校の場所は横浜なんですけど東京とか、埼玉とか千葉とかから来てる子もいて。
教科書を入れるのにプラスチックケースみたいなのがあるじゃないですか。あれを、わたしの周りはみんな使ってたんですよ。それが一種のステータスで、それがお洒落、みたいになってた部分があって。わたしの通ってた学校じゃなくても他の学校の子達も使ってたんで、それが当たり前だと思っていて、京都来た時にその話をしたら、「全然使わないよあんなの」とか言われて。あれでお洒落をするのが普通だと思っていて。首都圏だけの文化だったのかな。
高校はリュックでした。プラスチックのやつも使ってましたよ!リュックと合わせて使ってました。
あんまり地元、そこまで好きじゃないというか、もちろん育って来てそれなりに、このお店好きとか、愛着はありますけど。そんなに、絶対横浜がいい!とかはなくて、むしろ京都の方が好きかも、って感じなんで。

旅行、結構行きます。どこが1番いいか?国内海外問わずですか?え〜〜〜、、、広島か香港ですね。
広島は、空気感がすごいよかったんですよ。夏にいって、そこそこ暑かったんですけど、なんだろうな、、、町全体がすごい、ゆっくり時間が流れてる感じがするというか、路面電車とかもすごい良くて。瀬戸内海が穏やかだから、結構、人も穏やかな感じがしてて、余裕がある感じがする、何となくですけど、ふふ。町もいい感じに小ぢんまりしてて、人が多すぎず少なすぎす。広島市内が多分1番都会ですよね。駅まわりとか、駅からちょっとだけ路面電車乗ったりする辺りとか。お出掛けの範囲、というのは京都にいた時も考えたかもしれないです。やっぱ河原町とかに集中するじゃないですか。みんな、映画見るって人も、出かける場所が結構数ヵ所に限られるじゃないですか。それこそ出町座とか、予定なくふらっと行っても誰かに出くわしたりとかもすごいあるし。それがいいか悪いかも、感覚の違いというか、なんだろう、、、人と人の繋がりが密接というか。京都に住んでて、買い物行くなら京都駅まわりか河原町、とかあるじゃないですか。そこを窮屈と感じるかどうかみたいな。東京だったら買い物行くってなったらめちゃくちゃいろんな場所があるじゃないですか、なんだろう、学校に通ってると特に学校通ってる時間とプライベートってちょっと分かれるじゃないですか。プライベートな時に、知ってる人と出くわしたりとか自分の行動を知られたりするのがちょっと窮屈だなって人はやっぱり東京や、都会の方が向いてるのかなと思うこともあって。
広島は、旅行で行きました。大学在学中ですね。行ったことがなくて。結構みんな、高校の修学旅行で行くみたいじゃないですか、平和学習兼ねてたり。でも行ったことなくって、行ってみたいなと思って。京都からだったらバスでもそんな時間かからないんで、京都いるうちに行こうかなという気持ちで。

香港は、めっちゃ人が多いんですけど、東京と同じくらい人がいるんじゃないかって感じするんですけど、なんだろう、人が多くてもあまり急かされてる感じがしない。なんかちょっとゆとりがある。国籍もいろんな人がいっぱいいたりとかするし、うーん、、、街中に、車の屋台みたいなお店が毎日出ていて、ソフトクリーム売ってるおじさんがいて、そこのソフトクリームがめちゃくちゃ美味しくて。人生で食べたソフトクリームのなかで1番美味しいんです!めっちゃ安いし、料理も全部美味しいし。漢字表記と英語表記があるじゃないですか。だから1人で電車も乗りやすくて、離島も1人で行けちゃうんですよ。香港の街中は人がいっぱいいるけど、離島はすごい静かで、リゾート地みたいな感じで。離島いっぱいあるんですよ。何ヵ所か行きました、めちゃくちゃいいですよ、風景もすごい良くて。香港のヴェネツィアみたいなところもあって、水路があって、船がある、水の街。香港も基本的に移動は電車ですね。東京で、切符で改札通る時に若干時間かかるじゃないですか。その時に結構後ろで舌打ちする人とかいるじゃないですか、ああいう感じが香港はなくって、立ち止まっても後ろの人はきれいに避けて自分のペースで行く。各々が自分のペースでいることが結構好きなんです。

大学3年の時に、1人旅に行ってこい、って課題があったんですよ。「旅と文学」っていう。古典文学を1つ自分で選んで、その舞台になった場所、関連する場所に1人旅をして作品作りなさい、っていう課題。それで青森に行ったんです、太宰治の「津軽」をテーマにしていて。その時に、はじめてちゃんと1人旅したんですけど、それがすごい良かったんです。そこから、人と旅行に行ってもいいけど1人旅ってすごいいいな、ってなって。1人旅に行きはじめたら止まんなくなっちゃった。ふふふ。
学部の時、4年生ってあんまり授業ないんで結構な頻度で旅行していて。1番行ってた時は、1ヶ月に1回くらい行ってました。移動中は携帯をあんまりいじらない、っていうのをマイルールにしていて、本読むとか景色見るとか、そういうのをしようかなっていう、謎の目標を決めている。いいとか悪いってことじゃないんですけど、SNSとか、たまに距離を置きたくなる。
行き先は、自然で決めることが多いです。川行きたいな、とか。こないだは渓谷行きたいな、と思って渓谷のある場所に行きました、岩手の渓谷。

移動が好きなのかもしれないです。青春18切符を使ってこないだも京都に行ってて、まあ、めちゃくちゃ疲れるんですけど。
京都に引っ越した時に、京都と自分の地元の横浜が繋がってる感じが、、、繋がってるのわかるんですけど、あんまり、実感としてなくて。新幹線とかバスとかだとあんまり、景色は見えてるけどあんまり繋がってる感じがしなかったっていうか、変な感じがいつもあったんですよ。文化が関東、関西で違かったってのもあるかもしれないけど、土地と土地が繋がってる感じがない。それが、ちょっと怖かった。繋がってるのを確認したい。ちょっとくさい感じですけど、、、うん、確認したくて。

海外に、1人旅で行くことが増えた時に、確かに自分1人で海外行って戻って来て、ちゃんと日常を送っているんですけどあんまり実感が湧かないんですよ。ベトナムとかパリとか1人で行っても、「あれは本当だったんだろうか、、、?」って気持ちがずっとあって!でも国内はそれこそ青春18切符だったらそこの間の記憶があるっていうか、それが、安心する。
実家が、横浜のなかでも地下鉄沿いなんですよ。最寄り駅が地下鉄だったので、割と地下を進んでの移動が多かったんで、それが変な感じがしてたのかもしれないです。移動が、ちょっとワープみたいな。トンネルくぐり抜けたら急に違う場所にいる、みたいな。小さい頃からそういう感覚があったのかもしれない。

知り合いがやってるお店があるっていいなって思っていて、あるんですけど地元に、、、でもドラマとかで見る感じの、「よっ!」って感じのは全然なくて、そういうのにすごい憧れてます。ふらっと行ける感じ。そういうのが欲しい。アットホームに憧れています、地元はニュータウンだから、地元なのにどこか余所行き、みたいな感覚がすごくあります。

パリのスプーンです。パリに卒業旅行に行った時に、貧乏旅行だったので食費節約したくてなるべくスーパーで買い物して、ご飯食べて。スーパーでクレームブリュレが売ってたんですよ。普段、クレームブリュレそんなに食べないんですけど本場だから現地ならスーパーのものでも美味しいかも!と思って買って。で、食べようと思ったらスプーンがついてなくて。どうしよう、めっちゃ困る!と思って。でもフランスのスーパーで「スプーン下さい」って言えなくて。野外で、川沿いとか、ノートルダム大聖堂の近くて食べようと思って結構移動しちゃってたのもあるんですけど。お土産屋さん行って、安いものを買いました、クレームブリュレを食べるだけのために。スプーンの裏面がすごいんですよ。模様が入ってて、口の中に入れるとゴロゴロする。実用的ではない感じがする。クレームブリュレ食べて以来、洗って1回も使ってないんで、ほぼ未使用です。

学祭、祭りでみんながめちゃくちゃひとつになってて。すごいびっくりしてます。全体的にすごい盛り上がっていて、来場者も多いし。学祭は明日までです、わたしの展示も明日までです。でも明日、台風大丈夫かな。わたしは展示だけだし、展示は17時までだから大丈夫なんですけど、屋台の子たちが、、。あと、暑さがぶり返したから、屋台のおでんが全然売れないんですよ、あー、おでん、おでんか、、みたいな。

 

22:10/上野駅にて解散。

近場で旅行に行ってみたくなったので、箱根か熱海かどちらがいいかしむらさんに聞いた。「今は熱海が気分ですね」ということで、めちゃくちゃ出不精な私がしむらさんの影響で旅ブームのうちに、休みは熱海に行こうと思う。
自分がいつどこで死ぬかなんてわからないので、出来ればいつも望んだ場所で生活することに越したことはないと思う。どこで生きるか、ということを選ぶことはここで死ぬか、ということを決めることでもあるかもしれない、しむらさんが旅先の話をする姿を見ながら、そう思う。スケジュール帳を見ると、半年先にしかまとまった休みが取れなさそうだった。半年先にも旅ブームが続いてることを祈りつつ、帰った。