ひびにいる人たちを観察する

#17 luna hanai

20:00/京王線 仙川駅で待ち合わせ。

ひびのワークショップで、詩人の穂村弘さんとブックデザイナーの名久井直子さんと井の頭公園で吟行をした日のこと。公園を一通り歩いて、少し離れた会場で短歌を読んだ。この時の電車移動の時間をすごく覚えている。電車1両にひび全員が収まっていて、その風景が修学旅行か何かみたいで、大人になった今では結構貴重な状況でとても楽しかった。その時わたしと花井さんは隣同士に座っていて、そこで初めて会話をしたのだった。
仙川駅の前には大きな木があって、木の幹を囲むようにベンチが設置されている。昨日は十五夜でバイト先が忙しく残業で、十六夜の今日も遅刻するかも知れない、と花井さんに連絡すると「乗る電車を間違えました」と返信が来る。花井さんは最近引っ越しをしたばかりらしい。ベンチに座ってしばらくすると改札から花井さんが出てくる。息を切らしていたためひとまずベンチに腰掛け、花井さんが、話す。

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去年、せんがわ劇場で上演された作品に出演していて、その時に1週間くらい通ってたの。その時にすごい良いところだと思って、仙川が。それですごい、印象に残ってた。

お店、わたしの調べでは、お蕎麦かトンカツなんです、ふふふ。どっちも駅近なの。両方のお店見てから決めようかな、蕎麦屋は駅の裏側にあるっぽいんだけど。
あ、トンカツ屋、ここだ。すごい近かった!空いてるね、どうしよう。お蕎麦とトンカツどっちがいい?

駅のこっち側に来たことなかったな。お蕎麦、あのちょっと光ってるお店かな、提灯の。あ、ここだ。どうしよう〜迷う。でも決める!決めるけど、どうしよう、、、じゃあ、お蕎麦にしましょう!

せいろって何、、、?あれかな、四角い、四角かわかんないけど、ざるに乗ってるやつ。ざる蕎麦ってことかな。かけ蕎麦はかかってるやつだよね。1品料理も全部美味しそう。お蕎麦と何かにしようかな。すごい種類いっぱいあるね。よし、この「1人前天ぷら」の内容を聞いてから決めよっと。

引っ越しをしたんだ。つい先週。ずっと迷ってたんだけど決めた。もともと住みたい沿線があって、それで探してたんだけどあんまりなくって。結局決めたところは、電車の駅までは徒歩20分くらい。引っ越してから、家のすぐ近くにあるトンカツ屋さんに行った。トンカツ屋さんって大体、イケイケじゃないみたいな、お洒落過ぎないで、入りやすい。お洒落なお店は入るのに抵抗がある、1人だと特に、なかなかね。

いま、あげるものを思いついたのですが。海老はお好きですか?ふふふ。はい、海老です。海老の天ぷらをあげます。さっきまで、バッグの中から何かしら探してあげるつもりだったんだ。なんか用意しようかなって思ったけど、その場で思いついた方が楽しいかなって。で、海老の天ぷら2つあったから、海老だな〜って。

出身は福岡で、大学に行くタイミングで実家を出たよ。実家出たことって結構大きいよね。気軽に帰れる距離じゃないし。大学の時は4年間ずっと寮に住んでて。自分の部屋で、あんまり人と関わらないようにしていた。めっちゃ安かったんだけど、めっちゃボロかった。めちゃめちゃ人も住んでたよ、何百人って。でかい、ボロい屋敷。ふふふ。ほとんど留学生だったかな。留学生同士は結構仲良かったみたい。
寮には、あんまり慣れてはなかった。

出来るだけ手が混んでない見た目がいい。手が混んでない見た目になるために実際手が混むのはいとわないけど、1番は自分も手をかけずに、見た目も手が混んでないこと。前髪が難しい。前髪問題あるよね。結構な期間、前髪をずっと伸ばしてて。だからその時はなにもせず起きてそのまま家を出れる、みたいな感じだったんだけど、前髪つくっちゃったから、その問題が発生してる。髪の毛自体はずっと長いよ。高校生の時はめっちゃ短かったけど、でも福岡出て来てからは短くしてない。切ったとしても、括れるくらいかな。
染めたこともあるけど、基本は黒。学生の時に毛先だけ紫にしていたこともある。紫色にしたのは、なんとなく。紫、ヤンキー色。引っ越してきたけど、美容室は変えない。

家が全然片付いてないの。段ボールがずっとある。物、そんなに多くないんだけど。前の住んでた部屋がすごい変わった間取りで、ロフトがあったんだけど部屋全体の真ん中にロフトがあって。はじっこじゃなくて。しかもロフト高さが、立って、目線くらいの高さだから、下を通るときにしゃがまなきゃいけない、っていう、変わった部屋で。梯子の下に作り付けの台があったから全然、棚を持っていなくて。ロフトの説明が上手く出来てる気がしない、、、。早く棚を買いたい。棚を買わない限りずっと部屋が荒れてる。

引っ越し大変だったよ。気持ちが焦って。あれもやらなきゃ、これもやらなきゃ、って。あと、増税前に引っ越したかったから。

コンビニで飲み物買って、駅の前のベンチで話す?

今日はバイトしてきた。メインはお菓子屋さんなんだけど、今日は、最近ちょっとあたらしく始めたバイトで、お皿売ってた。怪しい壺とかじゃなくて!ふふ、百貨店で。催事場。いろんな百貨店に行く予定。バイト、1個だと飽きちゃうから。

夜だからなんでも暗いね、ふふふ。

趣味っていうか、家ではYouTubeを見る。芸人さんとか。お笑い、そんな詳しくないけど好き。テレビを見ないんだよね。一応持っているんだけど処分を検討してるくらい、見ない。携帯でYouTubeを流してるか、音楽を流している。でもレコードプレーヤーが持ってて、心に余裕がある時はレコードを流す。3、4年くらい前に買った、確か。大学卒業して、仕事をしている時に買った、ずっと欲しかったから。私はネットで買ったけど、普通にタワレコとかでも買えるし、あとは電気屋さんとか。確かにレコードプレーヤーって音楽を聞くためだけの道具だね。AppleMusicも課金してるよ。これ、趣味かもしれない!こんなに音楽を聞いてるって、気づかなかった!

レコードプレーヤー持ってる人にあんまり会ったことないかも。実家にはレコードプレーヤーはなかったんだけどでも親の世代がレコードだから、レコードが結構いっぱいあって、そう、それを貰って、で、レコードプレーヤーを買って、聞いてる。
外から始まって、だんだん中に動いていって、終わりなんだけど。針が。溝があるんだよ、こう、ぐるぐる。その溝の上を辿ってるんだけど。辿ると音が鳴るんだよ、すごい仕組みだよね。だから、何曲目がどことか分かんなくて、結局最初から聞く、みたいな。「この曲だ!」と思ったら円盤を見て、針の場所を覚えて、次からそこに刺したら目的の曲が聞けるのかな。そうしてるのかな、みんな。みんなどうしてるんだろう。
引っ越してからはまだ開封していない、、、ふふ、まだ箱に入って、部屋の隅に。

今は布団敷いて寝ている。ベッド欲しいんだよね。買わなきゃなと思いつつ、お布団あるから後回しにしちゃう。寮の時はベッドが元々あって、布団だけ持ってきて。前の部屋の時はロフトに布団敷いてたから。ロフト平気だったよ。確かに2段ベッドの上っていちいち登って、降りて、めんどくさい人もいるのかも。
実家のベッドが、2段ベッドじゃないんだけど上がベッドで下が収納っていうパターンで。梯子もあって。18年間そのベッドだったわけだから、上り慣れてたのかも。梯子を上り降りへの抵抗がないな。今気づいたけど。

ベッドの下が、チェストみたいな感じで、横に机もついてる。全部合体してるの。どうやって運んだんだろう、どうやって組み立てたんだろう、、、すごい大型家具だよね、どうやって部屋に入れたんだろう、絶対、ドアより幅あったよ。しかもお姉ちゃんもそのパターンだったから、1つの部屋に2セットあって。でも途中から部屋を分けたんだけど、その移動もどうやってやったんだろう、全然わかんない。誰がやったのかも覚えてない。
ベッドの周りにあんまり物はないかな。携帯くらい。逆に、上るから何も置いてなかったのかも。携帯と、ティッシュくらい。

月を、いつも気にしているかも。名前が「るな」だから。まあそれだけなんだけど。でもすごい、頭のどこかでずっと月のこと考えてる。今日は満月、とか今日は新月、とかすごい気にしてる。由来が、もう月の「るな」からそのまんま、取ってるから。漢字はね、なんでこの漢字なのかはわからない。読める方がいいって思ったんじゃないかな。お姉ちゃんの名前が星の名前、木星の衛星の名前。それで私は、月。
親が結構、天体が好きなんだと思うんだけど、多分お姉ちゃんは生まれた頃に見えるやつだったんだと思う。でも月はいつでもあるのにな、ふふふ。月に執着しているかも。よし、月が出てるみたいな。十五夜はなにもしないよ、意識しているだけ。「満月、、、」って、ずっと思ってる。あとローマ字表記の時に「LUNA」にしてて、それも決めてる。普通、ローマ字だったら、Rだけど。月、まんまなんだよね。名前まんま。宛てられてる漢字はたぶん意味ないと思うよ。
セーラームーン見てたよ!自分も名前が月だから、アツかったな。最近、セーラームーンとコラボTシャツがいっぱい出て、ルナのTシャツが出た時は買った。ルナは、セーラームーンに出てくる黒い猫。白はアルテミス。アルテミスも、別の国の言葉で「月」。ルナはスペインとか、あとローマ神話。アルテミスはギリシャ神話だったかな、ルナとは違う神話。月のことは一生気にし続けるね。
2人姉妹だから、3人目がいたらなんて名前だったんだろう。星からの月からの、、、。あと、宇宙も気になる。気にしてる、いつも。宇宙に、地球以外にも、生き物は絶対いると思う。宇宙船、地球に来てほしいな―。今日はでも、曇っているね。月が見えない。

もう22:30だ!そろそろ解散しようか。

 

22:20/仙川駅前で解散

名前が同じ、というのは私にとってもちょっと特別なことだ。私は苗字に「風」という字があって、だから今こうして吹いている「風」という名前のついているこの現象と、私を表す、私についている名前の1部の「風」が名前として同じということは、「風」が名前についていない人と私とでは「風」との関係性が全く違う、と思っている。この「風」については小学生の頃にそう思った記憶がきちんとあって、当時はもっと「風」と自分は同じだと思っていた。私が口笛を吹くと、風が吹いた。花井さんにこの話をすると強く共感してくれた、誰にも話したことがない記憶の話だったので、嬉しかった。そして実は花井さんが引っ越したことにより私と花井さんはご近所さんになっていた。花井さんに今度オープンするパン屋さんの情報をLINEしながら、帰った。